セルフインタビュー

坂本拓也(以下S):自分が自分にインタビューするということで、坂本拓也さん、よろしくお願いします。今回はあなたのユニットinformationについてお伺いしていきます。

坂本拓也(以下T):よろしくお願いします。

S:ではinformationを始めるきっかけってなんでしたっけ?

T:バンドやる夢をみたんですよ。僕がキーボードだった。他の編成はよく覚えてないです。ドラムはいました。それで、一音しかない曲とか、カウントだけの曲とか、みんなバラバラに始まる曲とかをやってた。あまりに可笑しな曲で自分の笑い声で起きた(笑)。それで急にバンドやりたくなったんです。やるなら普通のロックバンド編成でやりたいなと。

S:バンド名の由来は?思い出せます?

T:たしか古東哲明さんというハイデガーの研究者の"在ることの不思議"という本を読んでて、"存在自体は存在ではない"っていうことが書いてあって、概念だけあって実態がない的な、そんな名前にしよう考えて思いついたんだと思いますよ。情報って概念自体は情報ではない。情報って言われても何の情報?って。インフォメーションって響きも単純にかっこいいし、検索してもひっかからないのがいいなって(笑)。バンドは存在してるけど、それこそ情報は出てこない(笑)。

S:この時代、検索に引っかからないっていいですよね。他のメンバーってどんな人達ですか?

T:Loop-Lineの時からやってるエレクトロニクス講座の人達です。すごくみんな仲よくて気心しれてるから声かけやすかったのと、僕自身ミュージシャンじゃないんで、あまりバリバリやってる人は誘いにくくて…。でも音楽やってる人は必要だと思って特にライブハウスとかでやってる人に入ってもらいたかったのもあったんで、まず平野(敏久)さんに声かけました。彼はハードコアとかノイズ出身の人でギター弾けるんでギターやってもらおうと思ってたんですが、ドラムも多少できるということでドラムをやってもらうことになりました。(小林)寿代さんは昔ベースやってたって聞いたんで声かけました。ボーカルは堀真理子って勝手に決めてました(笑)。そしたら彼女もバンドやりたいと思ってたらしく、快諾してくれました。

S:曲はあなたが作ってるんですよね?図形楽譜ですね。

T:そう僕が書いてます。だけど曲じゃないんです。音楽的だけど音楽だと思ってないんで。

S:でもよくわかんないんですが…。バンド編成で音も出してるじゃないですかー。普通のロックミュージックではないとは思いますが、音楽じゃないってどういうことですか?

T:確かにそうですよね…。本当は最初音楽をやろうと思ってたんですが、ちょっと趣向が変わって。そもそも僕の活動のコンセプトって、"その存在が何の目的で何をやっているのか"、"何で存在しているのかわからない"、"どう接していいかわからない”、"意味不明"というのが根底にあるわけです。で、informationでは意味不明の謎の図文のようなものを音で翻訳してみようというコンセプトでやってます。声の部分は人間には発音できないものにしようと思ってアルファベットの子音だけを並べて無理矢理発音してもらってます。

S:じゃあ、informationの音は言語?何なんですか?

T:言語のようなものかもしれないですが、言語じゃないかもしれません。例えば、どう扱っていいかわからない未知のものが発見されたとします。その時にそれが何なのかは過去の事例とか経験を参照して、なんとなくこうなんじゃないか?あーなんじゃないか?って仮説をたてますよね。でも実際は違うかもしれないし、そうかもしれない。そこははっきりこうだって断定することはできないと思うんですよ。未知のものなんですから。
informationの場合、あくまで勝手な解釈ですが、謎の図文の解読をしてるわけです。しかもそれが結果何を意味してるのか自分たちにもよくわからないというのが重要ですね。
バンドで音をだしても音楽が目的ではないって僕は面白いと思うんですけどね。音楽が音楽であるっていう認識は、人間がそう教育されているからであって、例えばそういう文化のない他の知的生物がそう認識するかはわかりませんからね。

S:その図文ですが、どのように作ってるんですか?全体構造を想定してます?図形楽譜っていうと結局自由に発想していいっていうのもありますよね。その辺の違いはあるじゃないですか、informationには。

T:そうですね。音の高さ、長さ、速さ、この図文はこうするとかありますが、高さ、長さ、速さの目安は演奏者が自分で決めます。だからメンバー各々によって毎回音の高さ、長さ、速さ、タイミングは違う。なので他のメンバーとのアンサンブルも毎回ずれる。だから同じものでも印象は一緒だけど、違ってきますね。アンサンブルにならないようになっているところも多々あるんで、発音のタイミングがずれることで結果重なったりもします。
全体構造を意識してるかということですが、コンセプト優先で作ったものはなんとなくですが全体的に作ってます。そういうものはもしかしたらより音楽的かもしれないですね。誰かがこうしたらこうするっていうルールがあったりするんで。他は構成的に意味がわからないものになるように作ってます。それから僕自身もやるまで全くどうなるかわからないものも作ります。やったところで意味わからないですけど(笑)。そもそも意味なんかないですからね(笑)。予想外にポップになったりもしますね。でも全て意味がわからないと、無意味の定型ができてしまうので、意味がわからないものの中に音楽的なものも少し混ぜることで、より意味がわからなくなると思ってます。

S:録音とかはしないんですよね?

T:そうです。これはみんなで決めました。毎回違うものになるわけですから、録音だと同じものを毎回聴くことになるので、それはinformationのあり方とは全然違うものになっちゃう。だからライブしかしない。実際に情報(音)がその場にただ存在するだけです。そしてそれを確認した人にしか存在しない。僕らメンバーも含めて。でもその情報に意味はない、しかも毎回微妙に違ってくる(笑)。

S:なるほど。自分だからよくわかるけど、そういったコンセプトうまく伝わってますかね?

T:まあ、どんな風に認識してもらっても構わないですけど、意味がわからない、でも何か面白いって思ってくれたら嬉しいですね。
それにライブをやる度に変化しますし、新しい図文もあるので、興味がある方はライブに一回だけでなく、度々足を運んでいただけたら最高ですね。

http://noitamrofni.flavors.me/