キンクスとちびまるこちゃん

ちびまる子ちゃんを読むと、普通の町の普通の人々の普通の生活をリアルに描くということは、人間のえぐい部分、恥部もさらけ出すということなんだなと感じます。まる子はじいさん騙して金をもらうし、永沢くんは家が火事になったことをいいことに、その不幸をダシに注目されようとしたり、贔屓されようとしたりね。

キンクスもシングルwell respected manあたりから普通の人々の普通の生活を皮肉と愛をこめた曲を作り始めるわけですが、さくらももこにおけるちびまる子ちゃんの世界観と共通した感覚を個人的には感じるんです。ほのぼのしつつ、ブラックだけど愛があって、何かとほほ…ってなる。

パイ時代からアリスタ時代の60年代、70年代キンクスは本当にひねくれた、まさにキンクス(ひねくれ者)。おしゃれなスィンギイングロンドンのご時世、流行にながされる若者達を皮肉った曲や、サラリーマンや専業主婦の日常、姑のいびりで離婚してしまう若者夫婦、周りはドラッグソングの中、紅茶の歌を歌い、ロックがどんどん革新的な表現をする中、古き良きものをテーマにしたり、フーがじじいになる前に死んでやると歌えば、キンクスは年老いた自分を想像してみようと歌い、同じくフーがロックオペラ「トミー」で三重苦の少年の栄光と挫折を描いて大成功、キンクスは平凡な初老アーサーの平凡な人生を描いたロックオペラで失敗などなど、まあひねくれてますね。ロックバンドとは思えない世界観。

キンクスの歌に出てくる人物とちびまる子ちゃんの登場人物を思いつくままちょっとこじつけてみます。
古き良きヴィレッジグリーンを守る会、そのまま清水に置き換えれば、町の木や川を見守る佐々木のじいさんや川田さん、ごく平凡な初老のアーサーなんかは友蔵かな。はまじやブー太郎、藤木などのB級男子達はデヴィッドワッツ(大野くん、杉山くん)に憧れる。まる子はしょっちゅう金持ちやアイドルになる妄想をする(ソープオペラの主人公)。他に何かあるかな?

ちびまる子ちゃんの登場人物やキンクスの曲にでてくる小市民の悲喜こもごも、アンチヒーロー的世界観好きです。